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あぁ、食べれば食べるほど味なんてわからない...食品企画のフードメモ

読書メモ-『ビジネスマンのための「行動観察」入門』

前回取り上げた村田智明さんの本と当合わせて読み始めたリサーチ・アイディア系の本。

マーケティングにおいて、インサイトと言われ顧客心理の深層心理の大切さをプレゼンする本は沢山が出回っております。この本のテーマとなる「行動観察」も、その手法の一つ。アンケートやインタビューで知り得る表層的なユーザー情報ではなく、より深く、よりパーソナルに共感していこうという「観察」、「分析」、「提案」のステージで経験した話を説明している。商品開発やリサーチ、マーケといった人でなくても、営業や販売など顧客に接する立場の方なら、なかなか楽しめるのではないかと思う。

著者である松波晴人さんは、行動観察による調査やコンサルタントをおこなうオージス総研 行動観察リフレーム本部大阪ガス所長を勤められている人。

「1章 行動観察とは何か?」「2章 これが行動観察だ」「3章 行動観察とは科学である」の3部で構成されているうち、「2章 これが行動観察だ」では9件の実際の事例が紹介されれいる。体系化した概念や手法の説明ではなく、実体験を通じて「行動観察」を伝えようとしている。例えば、「優秀な営業マンとは何か?」営業チームに一ヶ月程潜伏し、優秀と一般的な営業マンの日常を観察し分析する事例。

どの事例も共通していたのは、被験者から高度な情報をインプットをするため人間関係を随分丁寧に築く姿勢が随所に語られていた。この点は、定量的、もしくは定性的な他のリサーチ手法ではバイアスを気にして避けがちな接点の取り方であるが、この行動観察の一つの重要なポイントだろう。

「ワーキングマザーの家事における実態調査」や「銭湯での顧客行動調査」興味深い調査ばかり。しかし、努力の末得たインプットもアウトプットも、本を開いて活字にしてみると「当たり前」に感じることばかりで平凡にも映る。本中の依頼者のコメントを参照すると「(調査の)結果を見た最初の印象は、当たり前すぎる、ということでした。でも、当たり前のことにこれだけ気づいてないんだなと思いました。」とある。何らかの施策となる前のピアな情報の状態では、いささか平凡と冷めた目となってしまうのは私だけではないだろう。

しかし、「こういったちょっとした情報と理解が、生死をわけるよね」と。カラフルな本を開いて目から鱗のアイディアに出会い、得をした気分になるのもいいいが、この本の事例を読んで目の前に事実を追求するマインドをリフレッシュさせる。そんな初心を思い出すのも重要だなと思った。