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あぁ、食べれば食べるほど味なんてわからない...食品企画のフードメモ

読書メモー『人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか』

世界中の美食家を呼び寄せる、スペインの北部バスク地方サン・セバスチャン(Donostia)の食文化について触れた本。


Amazonのお勧めに何度も何度もアップされるので、気になる心を払拭できず、ポチっと。 著者の高城剛氏といえば、ハイパーメディアクリエイターのあの方。ふわっとした肩書きに、本の内容は期待せずに読み始めたのは実に恥ずかしい… 


バスク地方のこの街で賞賛されているこの美食ブームメントとは、それを生み出す土壌となる文化やきっかけなど丁寧に説明されている。


第1章「世界一の料理となったヌエバ・コッシーナ」では、煮る・蒸す・焼くに加わる分子料理にて起こる料理イノベーション。世界でも指折りのシェフの出現やレストラン「エル・ブリ」の貢献。第2章「サン・セバスチャンの食文化」では、民族文化学的なバスク人の家庭につていの価値観や女人禁制の「美食倶楽部」の存在など、文化的な下地について言及している。第3章では「料理を知的財産にする」では、この地方で誕生した料理のアカデミア「バスク・クリナリー・センター」の存在。大学、研究所によるこれからの地域の食文化への関わり方。第4章では「サン・セバスチャンの成功から日本が学ぶべきこと」を述べている。ストーフードや在来種の保護など、保護や保全、懐古主義的なイタリアの名前で語られそうな食の運動とは別の哲学を持った前衛的な食の動きが心地よい。


この本を読んでから半年後、縁あってスペインへ旅行する。残念ながらバスク地方には足を運ぶことができなかった。


カタルーニャ地方やアンダルシアに合計10日間滞在し、全て晴れ。雨が多いバスク地方は、スペイン旅行のイメージからは一線を画すのはよくわかる。そう太陽やアート、情熱、海や山のイメージ。快晴で最高のバカンスをしながらカタルーニャの平凡な野菜をかじりると…同じフィールドで戦うと見劣りしてしまう地方であるが「グリーンツーリズム」と名を打って、雨が恵む豊かさはバスク地方の特色を大いに表現しているよう感じた。


日本の、奥田政行氏が著書の地方再生のレシピ ~食から始まる日本の豊かさ再発見~を思い出されるのだが、旅行や食が好きな人だけでなく、まちづくり系の興味の人でも楽しめる。